で、どこに捕まえてんだ?
学校の体育倉庫だ。俺の車はもう乗れんからドクオは自分のバイクで行け、内藤を乗せてな
バイク寒そうだお・・・
急ぐぞ、手がかり無くして自腹でロシアなんてのは嫌だからな

ショボンのRX-8が急発進する。
甲高い音の中、ドクオが愛車のエンジンをかけ、ショボンの車を追いかける。

いい車のってるなぁ先生・・・へへ、レースといくか!飛ばすぜ内藤!
お、お手柔らかにだお・・・

ドクオのバイク、原型がわからないほどに改造されたスカイウェイブが重厚なエンジン音を響かせる。
急激に加速したバイクはショボンの車を追い抜き、夜の街道にテールランプの軌跡を描きながら学校へ急いだ。

あの馬鹿・・・標準速度ってもんを・・・
飛ばしてるねぇ。ていうかあんた標準速度なんていってないでもっと飛ばしなさいよ

助手席に座っているつーは間髪いれずにショボンの足ごとアクセルを踏みつけた。

おぉ!?ちょ、やめろ!
ほら前見てーぶつかるよー。VIP高校の教職員スピード違反で事故起こし懲戒免職ー
そ、それはいかん。まだこの車のローンが・・・!

ショボンはハンドルを切り前方に迫った車をかわす。
仕方なく、クラクションが響く中、ドクオのバイクを追い抜く勢いで街道を走った。

パトカーきたらどうすっかなぁ
つかまっちゃうわね。生徒ものってることだし大変だわ
生徒ってお前・・・自分の年わかってんのかよ
ギコ来月お小遣いなしね
!?
お、先生追いついてきたな
速、速っ、寒っ!

道行く車を避けながら走るドクオのバイクのバックミラーに、ショボンの車が見える。
とても教師とは思えないような運転でどんどん距離をつめてきていた。

・・・首になるんじゃねぇの?あれ
あと3分もすればつくか・・・
・・・多分、もっとかかるねぇ

つーの足はもうどかされている。
かわりに、つーは片手を耳にあて真剣な顔をしていた。

この先、曲がり角の先あたりで・・・変な音がする。なんかキュンキュンいってるわ
キュンキュン・・・?あれか、恋する乙女でもいるのか?
おじさんみたいなこと言わないでよ。ほんとに私と同い年?
いや、昔同級生だったじゃん・・・

ドクオのバイクとショボンの車が速度を落とさずカープをまがる。
そこに音の正体があった。
独特な音をたてて空に浮かぶ、ハインド攻撃ヘリが。

わーい・・・これなんて映画?
ハインド!?街中でなんてもん飛ばしてるんだまったく・・・

ハインドの機種がこちらに向き、機銃が回転をはじめる。
最初はゆるやかだった回転は、すぐに音をたてて高速回転をはじめた。

一応言っとくが、俺は死にたくないぞ!避けろ!
死ぬのはともかく、この車はまだローンが残ってるんだよ!

ショボンは乗っている人間をシェイクするような勢いで車のハンドルを切る。
マシンガンなど比較にならない弾丸が一瞬で発射され、さっきまでショボンの車があったところが派手に砕け散った。
ショボンをはずした機銃は蛇行運転をするショボンの車ではなく、ドクオのバイクへと標的を変える。

おーおー、こっち向いちゃったよ
ちょ、落ち着いてないで早く避けるお!
んん、まぁ見てなって。俺の改造のすごさを見せてやるぜ
内藤、しっかり捕まって身をかがめとけ

機銃を向けられてもまっすぐ走るドクオのバイクに、容赦なく機銃が掃射される。
数千発の弾丸はアスファルトを砕きながらドクオのバイクに迫っていく。

展開装甲A、B、展開。各バレル開放、ドクオスペシャル、戦闘モードへシフト

だが、数千の弾丸が着弾する前に、ドクオはバイクに取り付けられたコンソールを操作する。
原型を無視し、2回りほどサイズが大きくなるほどの改造をされたスカイウェイブ・ドクスペシャルの装甲が割れ、せり出し、バイクの側面、後部を覆う。
前面の強化ガラスがせり出し、上面もカバー。
着弾した数千発の機銃弾は、たかがバイクの装甲を貫くことも出来ずに金属音をたて跳ね返された。

ちょ、ありえなすwwwドクオスペシャルって名前だせぇwwwww
はっ!このドクオスペシャルの複合装甲にそんな豆鉄砲がきくかよ!
おいおい、なんなんだあのバイクは・・・
ほ、ほしい・・・
・・・ま、まだ何かあるみたいよ

ドクオスペシャルの側面後ろ寄り、後輪の上のあたりに筒状のものがせりだす。
折りたたみ形式で収納されていたそれは外にでたとたん、折りたたまれる前の形にもどる。
その形は戦車砲のようであり、狙撃銃のようでもあった。

食らってみるかよ、10mm鋼製徹甲弾!

機銃の弾をはじき、良くはわからないが砲身のようなものすら出てきたバイクを見て、ハインドのパイロットは恐怖を覚えた。
機体を旋回させ逃げようとする。
だが、旋回が終わる前に機体を紙くずのようにドクオの放った弾が貫通する。
機体下部からローターの回転機を正確に破壊され、ハインドはコントロールを失い墜落した。
装甲と砲身が収納されていくバイクをとめ、ドクオは上る爆炎に向けていった。

このドクオスペシャルを倒したかったらせめて戦闘機を持ち出すんだったな
ヘ、ヘリを落としやがった・・・
もう怖くてあのバイク学校に乗ってきても注意できない・・・
でたらめなバイクだーねぇ

車をとめて呆然とみているショボン車組みに、ドクオが近づいてくる。

何止まってんだよ先生、急ごうぜ
あ、ああ。その、なんだ。街中で撃墜は控えるようにな
大丈夫だよ、ほら、市立図書館に落ちた。今なら誰もいないだろ
・・・こいつはやばい。何てとこに落としたんだ、バカ野郎。さっさと逃げるぞ
あいよ、もうすぐ学校だ、急ごうぜ!

後部座席に青い顔をした内藤を乗せてドクオは先に走り出した。
対照的にドクオの顔は妙にすっきりしている。

あのバイク、ミサイルとか出てきそうね
ああ・・・最近の高校生は恐ろしいな

ドクオの後ろを走るショボン車の中で、全員がドクオスペシャルに心奪われていた。

つ、ついたお。死ぬかと思ったお・・・
んだよ、大げさな・・・

ドクオは校門前にバイクをとめ、バイクにロックもかけずに歩き出す。

ロックとかしないで良いのかお?
ああ、指紋認証だ
・・・
つくづく理解に苦しむバイクだな・・・

車のドアを閉めて、ショボンたちが合流する。
ここまで来る途中に戦闘ヘリまで出てきたのだから、敵が救出にきているのは確実だろう。
まぁ戦闘ヘリを撃地してくるとは思っていないだろうから、それほどの戦力はいないはずだ。

さて、敵がいても少数だろうが、俺はここで待ってる。俺は戦えないからな
わかった。我々は体育倉庫に向かうぞ。つー、警戒は任せた
お任せー

つーとしぃは色違いの剣袋をだした。
しぃの袋は別に普通だが、つーの袋は妙に出っ張ったりしている。

それじゃいこっか
ギコ、危なくなったら情けなく脱兎の如く逃げ出してね
なんだよそりゃ・・・

体育倉庫は当然だが体育館にある。
ショボン、内藤、しぃ姉妹、ドクオの5人は、二手に分かれることになった。

内藤、お前は俺とこい
アイサーだお
ドクオ君はこっちね
よろ~
・・・なぁ、俺も戦えないんじゃないか?
・・・すまん、忘れてた。まぁ良いじゃないか。隅で縮こまっていろ
ちょwwww

VIP高校の体育館は2階建てで、体育倉庫は2階だ。
ルートは階段が東西に2つに、校舎からの渡り廊下。
渡り廊下は校舎から来なくてはいけないので除外する。

先生、どっちの階段から行くんだお?
・・・そうだな、東の階段から行こう
私達は西ね
よし、くれぐれも気をつけろよ。では、幸運を祈る

ショボンチームとしぃチームは頷きあい分かれた。

階段には・・・敵はいないようだな
あの、先生
ここに来る途中、教室に残った誘拐犯を捕まえたのは先生だってドクオに聞いたお
そうだが?
先生はホルダーじゃないんだお?何者だお?
ただの教師だが・・・。まぁ、特別な能力や技術がなくても強い奴はいるさ
そういうもんかお・・・?

強くなるには北斗の拳だと良くわからないことを言われ、会話を打ち切られる。
階段をのぼった先は運動部の部室のある小ホールになっていた。
部室の近くに倉庫をつくってくれれば良かったのだが、あいにく体育倉庫は小ホールとは反対側にあるステージの隣にある。
つまり、西階段のしぃ姉妹チームが倉庫に近い。
ショボンはわざと遠いほうを選び、陽動の役目をしようとしていた。
小ホールから体育館運動ホールへの扉の前にたつ。

内藤、おそらくこの扉の向こうには敵さんびっしり、御用提灯が十重二十重だ
御用提灯・・・?
俺たちは派手に登場して敵の注意を引き付ける。お前は少し遅れてこい
わ、わかったお
んじゃ、行くぞ

ショボンは扉をあけずに、思いっきり蹴り飛ばした。
夜の暗闇に染まる運動ホールの中に、赤い光点が浮かび上がる。

赤い目・・・!?

暗闇に突然あらわれた複数の赤い光点を見て、内藤はなにか得体の知れないものを想像した。
だが、受け継がれた知識がそれを否定する。
あれはナイトスコープ、突然現れたのはただ単に振り返っただけだと。

高そうなもんつけてるなぁ・・・

ショボンも気付いているようだ。
何でもないかのように悠然と敵にむかって歩いていく。
人数は5人だろうか。月明かりだけではわかりにくいが、映画のスパイが着ているようなスニーキングスーツを着ているようだ。
その手には銃がある。

MP-5マシンガン・・・。危ないお、先生!

ショボンは聞こえていないかのように歩き続ける。
無防備に歩いてくるスーツ姿の優男に一瞬呆然としていたが、男たちはすぐ気を取り直していっせいに
銃を構え、引き金を引いた。
5人分の発射音がひびき、ノズルフラッシュが運動ホールを照らし出す。

光に照らされ、ショボンが拳を硬く握る。

内藤は駆け出した。
ショボンは強くても普通の人間だ。
弾があたっても直らないし、銃弾を避けることなど出来るはずもない。
内藤の脳裏に、いやな考えが浮かんだ。
ショボンは陽動のために自らの身を犠牲にしたのではないか、と。

先生!!

走りながら叫ぶ内藤の目の前で、ショボンのスーツが蜂の巣になっていく。

せ、先生・・・そんな・・・

走っていた足をとめ、呆然とたたずむ。
視線の先にはボロボロになったショボンのスーツが―――

――え?
男A
・・・なんなんだ今のは?
男B
さぁな・・・宿直の教師じゃないか?
男C
しかし運の悪い奴だな
男D
ガキが一匹走ってきてるぜ
男E
やっちまおうぜ、さっきの教師みたいによ

男たちが内藤にむかって銃を構える。
構える音が、1、2・・・。

男A
ん?おまえら構え・・・

男が横をみると、ちょうど隣の仲間が崩れ落ちるところだった。
突然、背後から声がする。

砂糖のように甘いなぁ、君達。そんなオモチャでこの俺がどうにかなるはずないだろう

男は声を上げる間もなく、ショボンのジャーマンスープレックスによって人間トーテムポールと化した。

まったく・・・スーツが一着台無しじゃないか。19800円もしたのに
先生・・・びっくりさせないでほしいお。死んじゃったかと思ったお
いや、悪かった。びっくりさせたな
それにしてもどうやって避けたんだお?
ああ、あれこそ忍法空蝉の術・・・
忍法!?
・・・と烈火の炎にかいてあった