いつもと変わらない教室で、いつもと変わらない退屈な授業。
妄想をしながら、毎日が退屈に終わると思っていた。

キャーーー!!
な、なんだ!?

だが突然、窓が割れ謎の男たちが飛び込んでくる。
そう、僕が密かに守護する、”彼女”を拉致しに来たのだ。
妄想の中で、いつも守っていたツンを拉致にしに来たのだ。

おいおい、マジか!?
DQN
ちょwww特殊部隊ktkrwwwww

僕は応戦する。応戦しなくてはいけない。
なぜなら、窓から飛び込んできた男たちが、ツンに迫っているから。

え!?な、何!?なんでこっち来るのよ!

”彼女”に迫る男を拳一発で吹っ飛ばし、”彼女”を抱いて3階から飛び降りる。
いつも妄想していたことだ。
イメージトレーニングはばっちり。
理由はわからないが、朝起きたら僕の体は見違えるように強靭になっている。
いつも考えていたとおり動けるはずだ。

だから、この震える足を何とかして立ち上がり、ツンを守らないといけない。

は?は?うぇ??wwww

だが、体は動かない。
すぐ隣のツンに男が迫る。
守らなければいけない。ずっとそれを望んでいたのに、内藤は少しあとずさった。
予定では、目の前の男は自分の拳で吹っ飛んでいるはずなのに。
現実では、男はすでにツンの二の腕を掴んでいた。

ちょ、痛いっ!
・・・
ぁうっ!・・・

男は無言でツンの腹を思いっきり殴った。
高校生の喧嘩でふるわれるようなボディブローではなく、まるでK-1選手のようなボディブロー。
ぐったりしたツンを見て、内藤の体がやっと動いた。

う、うわぁぁぁぁ!!

ツンを抱きかかえようとする男に組み付く。
今なら、理想どおりになった筈の自分の体なら、こんな男など物の数ではない。

は、離すお!ツンは僕が守るんだお!
ぬっ!?

だが、男は僅かにたじろいだだけで、吹っ飛びもしなければ昏倒もしなかった。
組み付いているだけで、男の体が筋肉の塊であることがわかる。

・・・え?あ、あれ?
・・・勇敢なガキだ。だが愚かだな

妄想とは逆に、内藤は男の拳一発で宙に舞った。

机と椅子をなぎ倒し、内藤は床に叩きつけられる。
別に肉体的なダメージは大したことはない。
内藤の妄想の設定通りになった強靭な肉体は、この程度では傷もつかない。
ただ、猛烈に痛いだけだ。

うぇ・・・痛、いお。お母さん・・・
DQN
ちょ、おま、大丈夫か内藤!?
DQN
ほら、立てるか?つかまれ・・・って意外と重いな、ヒョロイくせに・・・?なんだこいつ、ガタイが・・・

DQNの一人に抱きかかえられ、嫌々ながらも立ち上がる。
気付けば、教室にのこっているのは生徒を逃がしているショボン先生と、僅かな生徒、ドクオ達DQNグループだけだった。
ツンを肩にかついだ男が内藤を一瞥し、仲間の男に目配せする。
仲間の男は携帯を取り出しどこかに電話をかけた。

・・・こちら誘拐組、ターゲットを確保した。これより撤収する
ツンを担いだ男
・・・少年、愚かだが君の勇気は買うぞ。まぁ、今日のことは忘れるんだな

教室の中央辺りにいた男二人は、自分たちがはいってきた窓のほうに歩いていく。

ま、待つお!

内藤の叫びなど聞こえないかのように歩を進める男たち。
だが、その足がとまった。

まぁ待てや、おっさん
DQN
なに帰ろうとしてんだよ?
DQN
俺らがガラス割りでもしたらよー、そこのショボン先生に鉄拳制裁くらう訳よ
それを何もなしに帰ろうってのは虫がよすぎるって
ぶち殺すぞ

ショボン先生とドクオ達が、男二人を取り囲んでいた。

な、なんで・・・
そりゃおまえ・・・
DQN
手伝ってやるって言ったじゃんwwwww
教師だからね
携帯の男
ふぅ・・・こちら誘拐組。ちょっとした妨害だ、3分遅れる
ツンを担いだ男
いや、良い。お前はこの娘を連れて行け。ここは俺が話しをつけていく
携帯の男
ん?そうか。面倒はごめんだからな、任せる

男は携帯をしまい、ツンを受け取る。
ツンを渡した男は面倒臭そうに腕を回し、自分たちを取り囲んでいる教師と生徒を見回した。

・・・お前が良さそうだな
DQN
あん?んだよ?やr・・・

DQNの一人が悪態をつこうとした瞬間、強烈なヤクザキックが飛んでくる。
ヤクザキックを腹に食らい、垂直に近い勢いでDQNの体が吹っ飛び、動かなくなった。

てめぇ!
いまだ、さっさといけ
ツンを渡された男
わかった。殺すなよ

包囲が一人分空き、そこから素早くツンを渡された男が窓に走る。
男は躊躇なく窓から飛び降りた。

飛び降りた!?く、どこへ・・・
おっと先生、どの方向へ逃げたか確認なんてしないほうが良いぞ、死にたくないならな
・・・おい、お前ら
なんだよ先生
DQN
危ないから逃げろなんていったらキレるぜ
いや、お前らはどうなっても良い。こいつぶち殺すぞ、やっちまえ
おうよ!

ドクオを筆頭に、DQN達が男に向かっていく。
呆然としている内藤に、ショボン先生が声をかけた。

内藤、外にでてツンを連れて行った男を追いかけるんだ。変な気はおこさずにどっちに向かったかだけ確認すればいい
え?あ・・・はい?
ツンはお前が守るんだろう?さっさと行け!まだ間に合うかも知れん!
あ、は、はい!

ショボン先生に叱咤されて、内藤は走り出す。
教室を出るとき振り返ると、いつも内心馬鹿にしていたDQN達が必死に男に立ち向かっている。
殴られて鼻血をだしても、歯が折れても立ち向かっている。
ただ痛いだけなのにツンのために立ち上がれなかった自分とは大違いだった。

体が強くなっても・・・僕は弱虫だお・・・
・・・さて・・・

内藤が教室を出るのを見守った後、振り向く。
DQN達は床に転がって呻き、ドクオだけがなんとか立っていた。

お前ら良く頑張ったぞ。数学の成績5にしてやる
先生さんよ、あんたひどいなぁ。けしかけといて自分は無傷ってのはいかんだろう
ま、まったくだって・・・ぐぅ・・・
悪かった、ドクオ。もう寝てていいぞ

スーツのボタンをはずし、ネクタイを緩める。
足を開き、拳を握り、静かに構えを取り。

こいつは俺がぶち殺す

一気に踏み込んだ。

・・・信じらんねぇ・・・

ドクオの目の前で、毎日のように見ている教師が戦っている。
信じられない強さで。

地が縮まったかのように錯覚する爆発的な踏み込みからはなたれた右ストレートは、自分たちを赤子のようにひねった男の顔を引きつらせた。
かろうじて避けた男の頬は裂け、続く蹴りで大きく男の体が傾く。
その光景は只事ではなかった。

ぬっ・・・!フン!!

男はすぐに体勢を立て直し、大気を揺るがすかのような裏拳を繰り出す。
ショボンは無言で同じように裏拳を。
男の豪腕とショボンの決して太くはない腕が交差し、ドクオは爆発がしたような錯覚を覚えた。

な・・・!先生さんよ、あんた格闘技の世界チャンピオンか何かかい?
いや?北斗の拳は全巻揃えているがね

ドクオは、北斗の拳を揃えようかと思った。